まいにちいろいろ

秘境で暮らす私の、てづくりとまいにちいろいろ。

バンクス半島のワイルドおやじ

エッセイ、というのはおこがましいけれど、
結構、私自身 ”書く”ことが好きなので、いままでの
私の人生でのいろいろなことをちょっとずつ書いて
みたいと思います。

よかったら読んでくださいね。

第1弾は、ワーキングホリデーで行っていた
ニュージーランドでのことです。

今でもたびたび何かでニュージーランドのことを
思い出すことはあるのですが、このおやじのことは
本当に忘れられません
私にとって、2回目となるニュージーランド(NZ)での長期滞在。

手始めに、大好きなNZの、大好きな農場で
働こうと決めていた私は、バンクス半島という
所にある大きな農場でお手伝いをすることになります。

なんと東京ドーム440個分!という広大な土地で
1人、農場を営む、ワイルドおやじ、コリン。

私はこのおやじに度々驚かされることになるのです。

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コリンは当時60歳。
いかつい顔と大きな体、大きな声、体力、気力ともものすごく、
とてもそんな年には見えませんでした。

結婚していない2人の女性との間にそれぞれ1人ずつ娘が
いますが、(NZでは珍しくありません)
たまに娘の1人が帰ってくるだけで、普段は1人暮らし。

そしてたま~に私のような手伝いが短期、または長期で
ステイしては去っていく・・という感じだったようです。

広大な緑の大地に、たくさんの羊と牛を飼っていて、
天気が悪くなければだいたい毎日、バギー、というのか
四輪の、オフロード走るバイクみたいな、車みたいな、
あれで、パトロールに連れて行ってくれました。

パトロールでは、たまに死んでしまった動物たち
を処理したり、と悲しいこともあったけど、
とにかく景色がすばらしくて、風が気持ちよくて、
羊の親子の温かい場面も見れたりして、
私はこの時間が本当に大好きでした。

バギーの後ろに乗っている私におやじは色々なことを
教えてくれました。

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1人で農場をやっていくのにはそうじゃなくちゃならない!
のかもしれませんが、とにかくこのおやじはワイルドでした。

たまに買い出しをしに、大きな街へ行くことがあったのですが、
そんなときは道路によく動物が死んでいたりします。

NZにはポッサム(フクロネズミ)という、木の皮とかを食べる害獣が
いて、タヌキか、ちょっと大きめの猫くらいの大きさなのですが
夜行性なので、夜、車に轢かれてしまうんでしょう、
よく道路端に死んでいました。

あんまり見ないようにしたいものだけど、おやじは違います。

それらしきものが見えると遠くからすばやく新鮮度を判断。
轢かれて死んでいるポッサムの中でも、まだ新しいのとか、
そんなにぐちゃぐちゃになっていないものを見つけると、
その横に「キィッ」と車を止め、何もいわずに降りていきます。

そしてジーンズのポケットからナイフを出し、ポッサムのお腹を
サクサク切って、中の内臓を全部出します・・。
(っていうか、そのナイフ、この前ケーキ切ったやつと一緒じゃん!!
と私は心の中で悲鳴をあげますが・・)

内臓を草むらにぽいっ。
そしてそのポッサムを車の後ろ、荷物とか置くスペースにどさっ!

何も言わずに車を走らせます。

車内にポッサムの血のにおいがプーーン・・・。
暑いふりをして、窓を少し開ける私・・。
何も言わないおやじ・・。

大きな街までは片道1時間半かかったので、最初のほうに新鮮な
ポッサムくんが落ちているとキツかった~。
それでもだいたい多い時で2匹くらい持って帰った時もあったかな。

そんな人なんです。

ところでこのポッサムをどうするか、というと・・・・
飼っている犬たちのエサです~。

内臓は食中毒を起こすことがあるそうで・・
内臓だけ取ってあげると飼い主に似てワイルドな犬たちは
喜んで食べていたようです・・。

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こんなこともありました。

おやじはたくさん牛(食肉用)を飼っていましたが、
最初のパトロールの時、
「こいつだけは違うんだ、こいつは売ることはない、俺のペットだから」
と言って”チェリーブロッサム”という名前の黒い牛を紹介してくれました。

羊もそうですが、親をなくしたりはぐれたりして死にかけている子どもを、
人間が育て、大きくなったら農場に放す、ということはよくあります。

おやじはこの牛をたいそうかわいがっていたけれど、紹介してくれたときは
すでに病気だったようです。
ずいぶん痩せていました。

そして私が来てから1カ月も経たないうちに、かわいそうなチェリーブロッサムは
死んでしまったのです。

「おれのチェリーブロッサムが死んじまったぁ~」
きっととても悲しんでいるだろう、と仕事をしながらも私は
気になっていたのですが、しばらく部屋にこもっていたおやじは
何も言わず、出かけて行きました。

しばらく1人になりたいのかも・・・私はいつも通り仕事を続けて
いましたが、思ったより早くおやじがバギーで帰ってきました。

いつものバギーのうしろに大きなカゴが取りつけられています。

私はその光景を見ておもわず目を疑いました・・。

青い空、見渡す限り緑の芝生、かわいい小さな子羊たち、そして
カゴに入っている、大きな黒い牛の足・・。
根元から切り取られた、血の滴る、大きな黒い牛の足・・。

「・・・・。」

おやじはかわいがっていたチェリーブロッサムちゃんの足を片方
太ももの辺りから切りとり、カゴに入れて持って帰ってきたのです。

・・何のために??

「いまからドッグフードを作るぞ」

・・また犬のエサか~!!!

「新鮮なうちに持ってきた。
 1本しか運べなかったけど。」
だそうです・・。

”新鮮”はおやじにとって大事なことのようです。

おやじの牛は日本の乳牛よりかなり大きく、トンまではいかないと思うのですが、
多分数百キロはあったと思います。

重たかっただろうに・・。
というか、あんなにかわいがっていた牛を犬の餌のためと言って
足を切り取ってもいいのだろうか?

というか、病気で死んだ牛の肉なんて、犬に食べさせても
いいんだろうか?仮にもブリーダーだろ?←そうだったのです。

といろんな思いが私の頭をかけめぐっていましたが、おやじは
お構いなしに、ひき肉マシンなるものを持ってきて、
私に指示をだしてきます。

結局私は、おやじがある程度の大きさにさばいた、
チェリーブロッサムちゃんの肉を、真っ赤な肉の塊を
ひき肉マシンに入れて、ハンドルを回し、ひき肉状にして
ドッグフードにしたのです。

袋に入れて、冷凍して・・。
大きい牛だったのでものすごくたくさんありました。

青い空のもと・・。

今まで生きていた鶏を絞めて食べたり、同じように豚を
ソーセージにしたりしても大丈夫だったのに、
この日だけは何も食べる気になれませんでした。

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私は結局このおやじの農場を1ヶ月半ほどで去りましたが、
その間、釣りに連れて行ってくれたり(連れていかれたり・・)
海に潜ってたくさん、イセエビやアワビを採ってきてくれたり、
野生のペンギンをみせてくれたり(ものすごい断崖絶壁を這わされましたが・・)
いきなり朝早く起こされて、ホワイトベイトという高級魚を
捕まえに行かされたりとか・・・・

おやじなりに、農場でのというか、この土地ならではの楽しいことを
たくさん私に体験させてくれようとしていたんだなぁ、と思いました。

あんな思い、そうそうできるものではなかったのかも・・
今になってそう思います。

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私をお母さんだと思っているかわいい子たち。


農場を去ってからは一度遊びに行っただけで、私は日本に帰って
きましたが、あれから7年。

おやじは67歳になっているはずですが、今もワイルドに
あそこで暮らしているんでしょうか。

そうだったらいいな、きっとそうだろうな、と思ったりするのです。

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ワイルドおやじ、コリン。

ここに載せた写真はすべてコリンの農場での写真です。

 










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[ 2011/01/25 23:16 ] 思うこと・小話 | TB(0) | CM(0)
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